多くの哲学者を生んだ古代ギリシアとはどのような時代だったのか

ソクラテスプラトンアリストテレス。哲学の始まりの地であり、多くの哲学者を生んだ古代ギリシア。では、彼らの生まれ育った古代ギリシアとはどのような時代だったのか。なぜ、古代ギリシアで哲学が生まれ、繁栄したのか。今回は哲学とは離れるが、彼らの生きた時代を知ることは彼らの思想を読み解く上で無駄ではないと思う。

 

都市国家の形成

古代ギリシア地方の人類の痕跡は40万年前にさかのぼることができるが、ここではもう少し後の時代を扱う。紀元前3200年ほど前からギリシア地方では青銅器が使われ始めた。この時代から地中海地方特産のオリーブやブドウが作られ始めた。ギリシア地方をテレビなどで見たことがある人ならわかると思うが、あのあたりは岩石が多くとてもすべての人の口を満たすだけの小麦を作ることができない。そこで彼らは豊富に作れるオリーブや葡萄酒をもって海に出た。交易である。

 

ミケーネ文明はエーゲ海シチリア島キプロス島にも広がりクレタ島で栄えたミノア文明も征服する。しかし、前1200年突如ミケーネ文明は消滅する。何故ミケーネ文明が滅びたのかは推測の域をでないが、ティリンスというペロポネソス半島の町では大きな地震があったことは確認されている。

 

このカタストロフはギリシアだけでなくエジプトや西アジア小アジアクレタ島を襲い、特にギリシアではその被害は大きくこれまで使われていた線文字Bは忘れ去られ、あらゆる文化的なものは姿を消した。

 

しかし、ギリシアはこのカタストロフによって大きな恩恵を得た。東方では中央集権的な王政が広まっていたが、東方との関係が遮断されたためギリシアに王政が広まることはなくアクロポリスを中心とした都市国家が形成された。

 

ポリスの発達と植民の開始

前8世紀以降、ポリスが発達しポリス内での政争に敗れた人々がシチリア南イタリアなどに移住するようになった。これにより、ギリシア人は地中海全域に広まり各地のポリス間での交易が活発になった。

 

中でもアテナイは立地を生かし、陶器や奴隷の輸出によって経済的に発展した。また、ギリシア唯一の銀山であるラウリオン銀山が開発されるとギリシア随一の都市国家となった。

 

後にアテナイと並ぶ強力な都市国家となるスパルタは同じころリュクルゴスによる今後の国体を決める大きな改革が行われていた。最も有名なスパルタの特徴である市民皆兵制度もこの改革によって定められた。

 

前743年、スパルタは隣国のメッセニアに攻め込みこれを征服した。スパルタは原住民をヘイロータイ と呼ばれる農奴とした。ヘイロータイは参政権がなく、スパルタ人に作物を納めるのが仕事だった。15万から20万と言われるヘイロータイに対し18歳以上の男子で構成されるスパルタ市民の数は1万から1万5千程度だったと考えられている。量こそ多くはなかったが幼いころより厳しい訓練が施され、どんな過酷な状況でも耐えられるように訓練されたスパルタ兵はギリシア最強とされた。

 

ペルシア戦争の勃発

古代ギリシア史で最も激動的な事件といえばアケメネス朝によるギリシア侵攻だろう。迎え撃ったギリシアからの呼称でペルシア戦争と呼ばれるこの戦争はギリシア本土とエーゲ海を挟んだ対岸のミレトスという港町の反乱をきっかけにしてはじまった。

 

ミレトスはアケメネス朝の支配下にあったが紀元前498年ミレトスの僭主アリスタゴラスは反乱を企て、アテナイに援軍を求めた。アテナイの指導者クレイステネスはペルシアと同盟を結ぼうとしたが民会はこれを拒否。ミレトスへの援軍を決定した。

 

アテナイの軍船20隻とエレトリアの軍船5隻の船団はイオニア軍と合流し、「王の道」の終着点サルディスを攻撃した。ペルシア軍はサルディスの市街地を放棄。中心部のアクロポリスのみを防衛する戦略をとった。さしたる戦闘もなく市街地を占拠したイオニア軍は市街地を焼き討ちしたが、アクロポリスを攻め落とすことはできず、ペルシア側の援軍を恐れた反乱軍は撤退した。しかし、途中でペルシアの騎兵隊の追撃を受け、反乱軍は壊滅した。これにより、アテナイ、エレトリア両軍は支援を打ち切った。

 

ミレトスへの支援を打ち切ったアテナイだったが反乱の支援はペルシア側にギリシア侵攻の口実を与えることとなった。紀元前492年ペルシア王ダレイオス1世はアテナイ、エレトリア両国への報復という名目でギリシア侵攻を開始した。

 

ペルシア艦隊はエーゲ海北部を進んでいたが暴風に遭遇し、大きな被害を受けた。陸軍もマケドニアで原住民の襲撃を受け、遠征軍を率いていたマルドニオスが負傷し、撤退した。

 

この侵攻は征服のための侵攻ではなく、偵察のためであったと現在では考えられている。本格的なギリシア侵攻である第一次ペルシア戦争は次の記事で書こうと思う。